☆チョコレートの箱「The
Chocolate Box」
(1993年制作、ケン・グリープ監督、脚本:ダグラス・ワトキンソン、
撮影:クリス:オドネル、音楽:クリストファー・ガニング、
原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、フィリップ・ジャクソン、ラサール・クルトリー、
アンナ・チャンセラー)
だったポワロの想い出の事件を描いている。
実際にベルギーの首都ブリュッセルにロケーションし、
数々の名所旧跡が画面に登場する。
ポワロがブリュッセルに来るのは、実はその功績を認められ、
勲章を授与することになったジャップ警部の授与式に
奥さんの代理として出席するため、そこで旧友のシャンタニエと再会、
ポワロが未解決に終わった事件を振り返ることになる。
第1次世界大戦の前夜、ベルギーの大臣ポール・デルラールは、
政教分離を巡りカトリック教会と対立しており、
また民族間の対立(オランダ語系とフランス語系)も背景にあり、
妻や母親、友人とは立場を異にしていた。
その妻マリアンヌが階段から落ちて死んだ事件が1911年におこる。
そして2年後、ポールが自宅で執務中にチョコレートに仕掛けられた
毒物で死亡する。
当時ベルギー警察にいたポワロはマリアンヌの従妹ビルジニーが
事件に疑問を持っていたことから、上司の反対を押し切り、
再調査しようと動いていた。
チョコレートの箱が事件を解くカギになるのだが、ポールの実の母親、
マダム・デルラールが、マリアンヌの死は実はポールが
階段のカーペットを引っ張り落として殺した場面を実際に見ており、
宗教的な問題からもポールを毒殺したことが明かされる。
その上、マダム・デルラールは余命半年という事実も判明した
ことからポワロは事件の真相を暴くことはせず、
永遠に闇に閉じ込めてしまうというストーリー。
実はデルラール夫人、色盲らしくチョコレートの箱の色を
間違っていたというあたりが面白い。
(ピンクと緑の蓋を間違えていたことからポワロが毒殺と気付く)
ビルジニーへの秘かな淡い恋心、すっきりと痩せたポワロが登場し、
びっくりだったが、ポワロが胸にさしているブローチの謎も
解き明かされる。
それにしても、いつにもましてフェミストぶりのポワロ、
ジャップ警部の誇らしい姿、ポワロが犯人の見込み違いをする
という異色の作品となっており、なかなか面白い作品だった。
終盤、薬剤師で昔の友人フェローが登場、息子が2人、
誰かの面影があると思っていたところに、久しぶりに出会う
ビルジニーが登場、以前と変わらぬ美貌にフェロー夫人と
敬意を持って挨拶をするポワロのアップの顔でエンディングとなる。
ノスタルジックでポワロ唯一の捜査の失敗と思った事件は、
実はポワロがしっかりと解決し、殺害したデルラール夫人への
敬愛の情が、ポワロの口を閉ざしたことを知ることとなる
ノスタルジックな作品。
“ポワロは面白い”☆☆☆☆
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