2020年10月26日月曜日

ポワロは面白い34 エジプト墳墓のなぞ「The Adventure of the Egyptian tomb」

 

☆エジプト墳墓のなぞ「The Adventure of the Egyptian tomb

(1993年制作、ピーター・パーパー・フレミング監督、

脚本:クライブ・エクストン、撮影:ノーマン・ラングレー、

音楽:クリストファー・ガニング

デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、ポーリン・モラン、ロルフ・サクソン、

オリバー・ピエール、ジョン・ストリックランド、ビル・ベイリー)



エジプト王家の谷の発掘隊が、メンハーラ王の埋葬室の扉を強引に

叩き割って入った途端、発掘のリーダー、ウィラードが急死する。

 

支援者のブライブナ―氏も指の傷から菌が入り、死亡する。

ニューヨークでは、フェリックスの甥ブライナーが、ハンセン病で

あることを苦にして自殺する。

 

ウィラード卿の妻は、発掘隊に加わる息子ガイを心配し、ポワロに

調査を依頼することになり、ヘイスティングスと共にエジプト・カイロへ

飛ぶことになる。

それにしても、エジプトとかメソポタミアとかが舞台となると

憧れがあるのか、ワクワクする。

 

残念ながら現地の映像は、スペインでロケされたとのこと。

それにしても発掘の様子やテントの並んでいる様子などは、

王家の谷ロケしていると錯覚するほどで、美術や雰囲気作りが素晴らしい。

 

殺害された人物に共通して関わっていた人物を辿れば、

答えはすぐに見つかるのだが、動機が良く解らなかった。

 

学生時代まで遡るのだが、ルパートとエイムズは学友で、

溺れたルパートをエイムズが助けたことがあり、恩に感じていた

ルパートは遺産をエイムズに贈与するという遺言が残っていたことが、

事件の発端だったことが明かされる。

 

原作者のクリスティーは元従軍看護婦だったこともあり、

薬がさまざま登場するストーリーともなっている。

ポワロが毒薬入りにティーを飲んだように見せかけ、

エイムズを追い込んでゆくあたりはポワロらしさが出ている。

 

猫を失くして元気のなかったミス・レモンに、メンハーラ王の墓から

持ち出してきたという猫のブロンズ像をお土産にあげる場面、

ポワロらしいジョークが面白い。

人物が限定されており、分かり易い作品だった。

 

“ポワロは面白い”☆☆☆

ポワロは面白い33 愛国殺人「One、Two、Buckle My Shoe」

 ☆愛国殺人「OneTwoBuckle My Shoe

(1992年制作、ロス・デベニッシュ監督、脚色:クライブ・エクストン

デビット・スーシェ、フィリップ・ジャクソン、ジョアンナ・フィリップス・レーン、

ピーター・ブリース、クリストファー・エセルストン)




 ポワロの苦手がまた見つかるのだが、それは歯科医で、ポワロの通う歯医者で

殺された歯医者のモーリー先生、最初はギリシャ人患者に間違って薬を投与

したことを悔やんでの自殺と思われていたところに、ポワロが登場する。

 

この作品の原作は1940年に発表されたが、作品もファシストの黒シャツ等が

登場、事件の鍵を握る人物である銀行家のブラントは、国のために尽力している

ことを公言してはばからない、そのためには人命が損なわれても止む無し

という野心的な人物として描かれている。

 

事件の背後には12年前のインドでの出来事が関与しており、成りすましと

変装がこの事件を解くカギとなってゆく。

歯科医モーリーの秘書グラディスの恋人が、モーリーが殺害される直前に

歯科医を訪れ、いらいらしていたことが歯科医のボーイによってジャップ警部に

報告される。

 

英国滞在中のギリシャ人アンベリオティスが殺害されたのは何故か?

また、別人だと思っていた、モーリー歯科医の患者メイベル・S・シーㇽが

顔面が砕かれて殺害されていたのは何故か?

 謎が謎を呼ぶ今作は、少し複雑に人物が絡み、ちょっと分かりづらくなってしまった

ようだ。インド滞在時代、銀行家のブラントは結婚しており、ロンドンに

帰ってきてからの結婚は二重結婚であることが背景に隠されていたという構成。

 

関係者一同を前に事件の謎を解き明かす、ポワロは、二重婚姻がばれるのを

恐れその証拠を隠すために、3人も殺人を犯すことになったことを、解説し、

殺人を国のためと肯定するブラントに対し、ポワロは国よりも個人の命が大切と

反論する。

この作品に出演しているブラントの亡くなった妻の妹の娘ジェーンを演じた

サラ・スチュワートが美形で目を惹いた。

 

この作品には、ヘイスティングスとミス・レモンは登場しないが、ジャップ警部と

信頼で結ばれているのが良く解る。

ジャップ警部の自宅を訪問するシーンも挿入されている。

 

“ポワロは面白い”☆☆☆

 

2020年10月21日水曜日

ポワロは面白い32 雲をつかむ死「Death in the Clouds」

 ☆雲をつかむ死「Death in the Clouds

〈1992年制作、スティーブン・ウィテカー監督、

脚本:ウィリアム・ハンブル、撮影:アイバン・ストラスバーグ、

音楽:クリストファー・ガニング

デビット・スーシェ、フィリップ・ジャクソン、サラ・ウッドワード、

シャウン・スコット、キャサリン・ハリソン、デビッド・ファース、

アマンダ・ロイル、リチャード・イレソン、ジェニー・ダウンハム)

   

パリの観光名所が随所に登場、さながらパリ旅行の雰囲気が味わえる作品。

 

英国とフランスを結ぶ航空機の中で、金貸しの老婦人が毒矢に刺され、

殺されるという事件が起こる。

その際ポワロは飛行機に同乗していたものの、飛行機が苦手なポワロは、

目を瞑っていたという設定。

 

パリでは全仏オープンの準決勝、決勝のシーンが登場、

フレッド・ペリーが優勝という時代設定、1936年の試合である。

観戦している老婦人マリー・ジゼルは金貸し、女優のホーバリ伯爵夫人、

そして新任のスチュワーデス/ジェーン、歯科医のノーマン・ゲイル等、

主な登場人物はテニス観戦のシーンに登場する。

 

飛行機の中には、探偵小説で人気を博している作家ダニエル・クランシー、

考古学者のデュポン、ホーバリのメイド等が飛行機に搭乗、

他にマリー・ジゼル、ホーバリ夫人、ノーマン・ゲイル、

そしてジェーンとスチュワードのミッチェルも搭乗している。

 

亡くなったジゼルの遺産の受取人である娘アンも警察に出頭、

ホーバリ夫人はジゼルに多額の借金があるという設定で

、犯人らしき人物が入れ替わり立ち代わり登場する。

 

パリ警視庁のフルニエ警部もジャップ主任警部に協力するが、

ジャップ警部が上から目線で命令するのが楽しい。

南米の吹矢に翻弄されるポワロだったが、調査を進める中で、

アンの結婚相手に注目、さらに機内でスチュワードに変装した人物が

ジゼル殺害の犯人と結論付ける。

 

その犯人とは、ジェーンと親密になっていた歯科医のノーマン・ゲイルで、

ジゼルを殺害し遺産相続人となるとアンと結婚、アンも殺害し遺産を

独り占めにする計画なのだが、ポワロに見破られるというストーリー。

 

勿論、原作を大幅に脚色しているのだが、テレビドラマとしては

見応えがあり、ポワロは飛行機が嫌いだということがよく解る

作品となっている。甘いものが大好きなことも発見である。

ケーキが食べれなくて心残りな表情のポワロが楽しい。

 

女性にはあくまでも親切で、フェミストのポワロ、この作品でも

本領を如何なく発揮している長編である。

 

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆

 

 

 

2020年10月11日日曜日

ポワロは面白い31/ABC殺人事件「The ABC Murders」

 

ABC殺人事件「The  ABC  Murders

(1992年制作、アンドリュー・グリーブ監督、

脚本:クライブ・エクストン、原作:アガサ・クリスティー

デビット・スーシェ、ヒュー・ジャクソン、フィリップ・ジャクソン、

ソナルド・ダグラス、ニコラス・ファレル)


 

南米ベネズエラからヘイスティングスが帰国する。

ポワロへのお土産はオリノコ川流域で生息するカイマンという

ワニのはく製でヘイスティングスが仕留めたものだという。

 

臭いに閉口するポワロだが、そんなことにはお構いなしの

ヘイスティングスの得意顔が面白い。

カイマンのエピソードは、後半にも出てくる。

 

ポワロに殺人予告の手紙が届く、アルファベット順に無差別に

指定された町や村で殺害が実行される。

ABC殺人事件と呼ばれる理由である。

 

アンドーバーでは雑貨店の老婦人アッシャー、ベクスヒルでは

ウェイトレスのエリザベス、チャーストンでは富豪の

サー・マイケル・クラークが犠牲となる。

 

殺人予告の手紙では、犠牲者を特定しているわけではなく、殺害日と

地名が記載されているだけで、ジャップ警部も地元警察も、

そしてポワロも対策を取ろうにも取り様がない。

 

そんななか、サー・マイケルの妻シャーロットが、見知らぬ男と

秘書のグレイが話していたのを見たと主張する。

 

ストッキングのセールスマンであることが判明、その男の特徴は

“特徴のない男”ということで、猫背で眼鏡をかけた中年男を、

犠牲者の家族と一緒に捜索するポワロと警察が描かれる。

 

3件目の殺人は、前の2件の殺人予告とは異なり、殺人が

指定された期日にポワロに手紙が届き、届いたころには既に

殺害されていたという事実、手紙はポワロのマンションの宛名が

間違っていたので転送されて遅くなったという理由、

 

実は、この奇妙な間違いが事件の解決に結びついてゆくのだが、、、、。

 

ドンカスターでの第4の殺人予告、当日は競馬大会があり

ドンカスターに沢山の人が集まるのだが、警察の思惑とは異なり、

映画館で第4の殺人が実行される。

 

容疑者としてストッキングの訪問販売員アレキサンダー・カストが

逮捕される、ジャップ警部は自白していることから犯人と

信じて疑わないが、カストと面会をしたポワロは第3の殺人の際、

カストにはアリバイがあったこと、そして作為的な無差別殺人で、

利益を得るのは誰か?という観点から、事件を再度見つめなおす。

 

第3の手紙が転送されてポワロに届いたことが、事件の真相を

つきとめることに繋がっていく。

 

4件の殺人の中で得をする人間を絞り込み、さまざま状況を照らし合せ、

富豪のサー・カーマイケルの殺害こそが、この無差別殺人

ABC殺人事件の真の目的だったことを解明する。

得をする犯人は弟フランクリンであることを指摘、逃げようとする

フランクリンは警察に捕らえられるという結末。

 

ABC鉄道案内を被害者の傍らに置いておくという殺人のアイデア、

ABC鉄道案内は1839年創刊されているが、ABCという略称で

親しまれていたらしい。

 

ロンドンと英国各地の往来に特化した案内で所在地と人口、

ロンドンからの距離と運賃、時間、ホテル等が記載されていた。

 

アガサ・クリスティーは旅好きで知られているが、常にABC

携帯したのだろうか。奇想天外な発想とアイデアは、アガサならではの

ミステリーの醍醐味が味わえる作品である。

 

本筋のストーリーの他にポワロとヘイスティングスの軽妙なやり取りや

ジャップ警部との会話等目立たないがホッとさせるあたりの演出も

見逃さないでほしい、このシリーズの隠れた魅力でもある。

 

“ポワロは面白い”☆☆☆☆