2020年10月11日日曜日

ポワロは面白い31/ABC殺人事件「The ABC Murders」

 

ABC殺人事件「The  ABC  Murders

(1992年制作、アンドリュー・グリーブ監督、

脚本:クライブ・エクストン、原作:アガサ・クリスティー

デビット・スーシェ、ヒュー・ジャクソン、フィリップ・ジャクソン、

ソナルド・ダグラス、ニコラス・ファレル)


 

南米ベネズエラからヘイスティングスが帰国する。

ポワロへのお土産はオリノコ川流域で生息するカイマンという

ワニのはく製でヘイスティングスが仕留めたものだという。

 

臭いに閉口するポワロだが、そんなことにはお構いなしの

ヘイスティングスの得意顔が面白い。

カイマンのエピソードは、後半にも出てくる。

 

ポワロに殺人予告の手紙が届く、アルファベット順に無差別に

指定された町や村で殺害が実行される。

ABC殺人事件と呼ばれる理由である。

 

アンドーバーでは雑貨店の老婦人アッシャー、ベクスヒルでは

ウェイトレスのエリザベス、チャーストンでは富豪の

サー・マイケル・クラークが犠牲となる。

 

殺人予告の手紙では、犠牲者を特定しているわけではなく、殺害日と

地名が記載されているだけで、ジャップ警部も地元警察も、

そしてポワロも対策を取ろうにも取り様がない。

 

そんななか、サー・マイケルの妻シャーロットが、見知らぬ男と

秘書のグレイが話していたのを見たと主張する。

 

ストッキングのセールスマンであることが判明、その男の特徴は

“特徴のない男”ということで、猫背で眼鏡をかけた中年男を、

犠牲者の家族と一緒に捜索するポワロと警察が描かれる。

 

3件目の殺人は、前の2件の殺人予告とは異なり、殺人が

指定された期日にポワロに手紙が届き、届いたころには既に

殺害されていたという事実、手紙はポワロのマンションの宛名が

間違っていたので転送されて遅くなったという理由、

 

実は、この奇妙な間違いが事件の解決に結びついてゆくのだが、、、、。

 

ドンカスターでの第4の殺人予告、当日は競馬大会があり

ドンカスターに沢山の人が集まるのだが、警察の思惑とは異なり、

映画館で第4の殺人が実行される。

 

容疑者としてストッキングの訪問販売員アレキサンダー・カストが

逮捕される、ジャップ警部は自白していることから犯人と

信じて疑わないが、カストと面会をしたポワロは第3の殺人の際、

カストにはアリバイがあったこと、そして作為的な無差別殺人で、

利益を得るのは誰か?という観点から、事件を再度見つめなおす。

 

第3の手紙が転送されてポワロに届いたことが、事件の真相を

つきとめることに繋がっていく。

 

4件の殺人の中で得をする人間を絞り込み、さまざま状況を照らし合せ、

富豪のサー・カーマイケルの殺害こそが、この無差別殺人

ABC殺人事件の真の目的だったことを解明する。

得をする犯人は弟フランクリンであることを指摘、逃げようとする

フランクリンは警察に捕らえられるという結末。

 

ABC鉄道案内を被害者の傍らに置いておくという殺人のアイデア、

ABC鉄道案内は1839年創刊されているが、ABCという略称で

親しまれていたらしい。

 

ロンドンと英国各地の往来に特化した案内で所在地と人口、

ロンドンからの距離と運賃、時間、ホテル等が記載されていた。

 

アガサ・クリスティーは旅好きで知られているが、常にABC

携帯したのだろうか。奇想天外な発想とアイデアは、アガサならではの

ミステリーの醍醐味が味わえる作品である。

 

本筋のストーリーの他にポワロとヘイスティングスの軽妙なやり取りや

ジャップ警部との会話等目立たないがホッとさせるあたりの演出も

見逃さないでほしい、このシリーズの隠れた魅力でもある。

 

“ポワロは面白い”☆☆☆☆

 

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