☆100万㌦債券盗難事件「The
Million Dollar Bond Robbery」
(1991年制作、アンドリュー・グリープ監督、脚本:アンソニー・ホロヴィッツ、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、ポーリン・モラン、デビット・クイルター)
ポワロにロンドン・スコティッシュ銀行から、100万ドル相当の債権を
アメリカに移送する際の同行者として、クイーン・メリー号に
乗船して欲しいとの依頼が舞い込む。最初は船は嫌だとごねるポワロだったが、
乗船中にこの船のサービスはとても信じられないと感嘆の言葉を述べ、
豹変していくのもポワロらしい。
前段として、銀行の担当部長ショーが、赤い車に轢かれそうになったことや、
コーヒーに淹れられた毒で、危うく命を落としそうになったこと等が描かれる。
そのため、移送を担当する予定だったショー部長の代わりとして、
リッジウェイが移送を担当することとなる。債権の入ったボックスの
合いカギは3本あり、ショー部長、ババソワ部長、そしてリッジウェイが
持つこととなる。
入院したババソワ部長の秘書のエズミーの婚約者でもあるリッジウェイは、
お調子者でギャンブル好き、エズミーはリッジウェイが債権を盗むのではないかと、
(盗難に遭うことも恐れ、もう一人の担当部長であるババソワ氏の持つ鍵を
盗み出していたことも後でわかるのだが)リッジウェイを心配するあまり
ポワロに監視を頼むという構成。
原作とは登場人物も事件の背景も大きく異なっており、クイーン・メリー号の
処女航海に移送するというのも、テレビドラマオリジナルである。
しかし、演出効果としてはとても面白く、当時の実写フィルムを映し出し、
臨場感を盛り上げている。
当時のクイーン・メリー号の人気の高さが偲ばれ、実写フィルムに合わせて、
ニュースにポワロが映し出されるという特殊効果も演出されている。
ヘイスティングスも同行することになり、大いに喜ぶのだが食あたり
(牡蠣にあたった)で元気がなく、ディナーでポワロが牛の脳みその
ソテーを注文、その料理を見てまた、気分が悪くなるなど笑える演出もある。
100万㌦の債権の入ったボックスはリッジウェイが管理しているのだが、
食事の後はカードゲームに熱中し、部屋の債権は誰も守っておらず、
霧の夜部屋に賊が入りボックスがこじ開けられ、債券が盗まれる。
デッキに出ていたヘイスティングスは、隣の部屋のミランダ嬢にすっかり舞い上がり、
デッキですれ違うが怪しむこともなく、実は彼女が事件に大いに
関与していることが後でわかるのだが、、、、、、。
銀行の警備主任マクニールは、ベルギー人には何もできないとポワロを
敵対視しているが、(原作では元警察の警部でポワロとも旧知の間柄)
ポワロは無視し、鍵は関係ないと断言する。
ロンドンの港に戻ったクイーン・メリーから下船する際にリッジウェイを
容疑者として警察に引き渡すシーンがあるが、カジノの負けを
取り返しに来た取り立て屋から、リッジウェイを守るためだったという
ポワロらしい気遣いを見せる。
入院していたショーが実は事件の黒幕で、銀行務めで40年、神経が
すりへるばかりで疲れたと債権の強奪を計画、協力してくれた看護婦の
ミランダとは愛人関係で、美人に変装させ、クイーン・メリーに乗船させ、
債券のボックスが盗難に遭ったように細工をしていたという顛末で、
実は債権はボックスの中にはそもそも入っておらず、ロンドンに
あったという謎がポワロによって解き明かされる。
今作のポイントは、アメリカでの公債計画は誰がしたのか、リッジウェイを
推薦したのは誰か、自動車に轢かれそうになったのは誰か、
毒薬を飲まされたのは誰か、死ななかったのは誰か等で
ポワロの推理が冴えわたる。
クイーン・メリーで出会ったミランダにすっかり参っていたヘイスティングスは、
看護師に変装した彼女の変身ぶりにすっかり驚き、女性は信じられないと
つぶやくが、ポワロから少しは成長したのではと声をかけられる場面で
エンディングとなる。今作には、ジャップ警部は出演していない。
クイーン・メリー号の処女航海の様子、そしてロンドンへ寄港する際の
実写フィルムが見られる作品で、とても面白かった。
“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆
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