☆マースドン荘の惨劇「The
Tragedy at Marsdon Manor」
〈1992年制作、レニー・ライ監督、脚本:デヴィット・レンウィック、
原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、
ポーリン・モラン、イアン・マクロック)
ポワロとヘイスティングスは、ロンドンから遠く離れたマースドン村へやってくる。
理由は、ホテルの主人サミュエル・ジェームス・ノートンから事件の解決を
依頼されたと思ってのことだったが、到着して本人に会ってみると、
実は執筆中の小説の事件が複雑になり過ぎたので、ポワロに解決して欲しい
という依頼だったということで、少々おかんむりのポワロ。
事件解決に、ホテルの主人が大いに貢献するシーンがあるのも楽しめる。
しかし、そのころマスド―ソン荘の主人、マルトラバース氏が
死体となって発見される。
前半、恐怖に怯えるマルトラバースの妻スーザンのいくつかのエピソード、
スーザンに恋をしているマルトラバースの友人ブラック大尉なる人物の登場等が
描かれ、幽霊が出るという噂やマルトラバース氏の秘書ミス・ローリンソンの
無気味な表情等何か呪いの様な恐ろしい出来事がマスド―ソン荘に
起こっている様なイメージを与える演出となっている。
その一方で、蝋人形館にポワロの人形が陳列され、民間防衛訓練でガスマスクを
つけて訓練する場面が映し出されたりと、息抜きの様な場面も見ることが出来る。
主治医の情報から病気だったマルトラバース氏が少しづつ回復してきていたことや
ジャップ警部の検視報告の情報等から、事件はポワロの名推理が
冴えてお金目当てのスーザンの犯行だったことがポワロによって暴かれる。
アガサ・クリスティーは女性だからこそ、女性の心理の複雑さが良く解るがゆえに、
女性が殺人に関わる作品を多く発表したのだろう。
今作でも、ブラック大尉がスーザンへ向かって“僕のためにやったのか?”と
問いかけ、スーザンは苦笑いし無言で立ち去るという場面があるが、
お人よしの男に対し、そんなこと考えもしていないわよ、お金の為よと
捨て台詞を心の中で吐いている女性、皮肉だが、女性への幻想を抱き続ける男と
もっと現実的な女性が描かれ、とても興味深い。
ポワロシリーズでも、女性が犯行の主犯だったり、協力者だったりと女性の犯人が
多いのも、クリスティーが世の中の男性に対し、女は現実的で内面は複雑なのよと
訴えているようである。
そういう意味からも面白い作品だった。
“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆
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