2020年8月19日水曜日

ポワロは面白い25/マースドン荘の惨劇「The Tragedy at Marsdon Manor」


☆マースドン荘の惨劇「The Tragedy at Marsdon Manor
〈1992年制作、レニー・ライ監督、脚本:デヴィット・レンウィック、
原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、
ポーリン・モラン、イアン・マクロック)

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ポワロとヘイスティングスは、ロンドンから遠く離れたマースドン村へやってくる。

理由は、ホテルの主人サミュエル・ジェームス・ノートンから事件の解決を
依頼されたと思ってのことだったが、到着して本人に会ってみると、
実は執筆中の小説の事件が複雑になり過ぎたので、ポワロに解決して欲しい
という依頼だったということで、少々おかんむりのポワロ。

事件解決に、ホテルの主人が大いに貢献するシーンがあるのも楽しめる。
しかし、そのころマスド―ソン荘の主人、マルトラバース氏が
死体となって発見される。

前半、恐怖に怯えるマルトラバースの妻スーザンのいくつかのエピソード、
スーザンに恋をしているマルトラバースの友人ブラック大尉なる人物の登場等が
描かれ、幽霊が出るという噂やマルトラバース氏の秘書ミス・ローリンソンの
無気味な表情等何か呪いの様な恐ろしい出来事がマスド―ソン荘に
起こっている様なイメージを与える演出となっている。

その一方で、蝋人形館にポワロの人形が陳列され、民間防衛訓練でガスマスクを
つけて訓練する場面が映し出されたりと、息抜きの様な場面も見ることが出来る。

主治医の情報から病気だったマルトラバース氏が少しづつ回復してきていたことや
ジャップ警部の検視報告の情報等から、事件はポワロの名推理が
冴えてお金目当てのスーザンの犯行だったことがポワロによって暴かれる。

アガサ・クリスティーは女性だからこそ、女性の心理の複雑さが良く解るがゆえに、
女性が殺人に関わる作品を多く発表したのだろう。

今作でも、ブラック大尉がスーザンへ向かって“僕のためにやったのか?”と
問いかけ、スーザンは苦笑いし無言で立ち去るという場面があるが、
お人よしの男に対し、そんなこと考えもしていないわよ、お金の為よと
捨て台詞を心の中で吐いている女性、皮肉だが、女性への幻想を抱き続ける男と
もっと現実的な女性が描かれ、とても興味深い。

ポワロシリーズでも、女性が犯行の主犯だったり、協力者だったりと女性の犯人が
多いのも、クリスティーが世の中の男性に対し、女は現実的で内面は複雑なのよと
訴えているようである。

そういう意味からも面白い作品だった。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆



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