☆死との約束「Appointment
with Death」
(2008年製作、アシュレイ・ピアース監督、
脚本:ガイ・アンドリュース、撮影:ピーター・グリーンハル、
音楽:クリストファー・ガニング、原作:
アガサ・クリスティ
デビット・スーシェ、ゾーイ・ボイル、ティム・ガリー、
シェリル・キャンベル、クリスティーナ・コール、エマ・カニフェ、
ポール・フリーマン、マーク・ゲイティス、ジョン・ハナ―、
エリザベス・マクガヴァン、クリスチャン・マッケイ、トム・ライリー)
・「死海殺人事件:Appointment With Death:88」
は原作を同じとするものの、内容は大幅に異なっており、
「名探偵ポワロ」の舞台はシリアの遺跡発掘現場となっている。
原作者アガサ・クリスティの旅行好きな一面が良く出ている作品で、
・「ナイルに死す」
・「メソポタミア殺人事件」
等と同列で、観光名所めぐり的な意味合いもある作品。
原作では、現ヨルダンのペトラ遺跡の旅行だったものが、
テレビドラマではシリアの遺跡発掘現場と変更されている。
(ヨルダンでのロケは、危険だったのか、許可が下りなかったのだろうか。)
ロケーションの地は、モロッコのカサブランカやエル・ジャディーダ等
で行われたと資料に書かれている。
登場人物も当然のように変更されるのが「名探偵ポワロ」シリーズだが、
ドラマはドラマとして面白ければいいので、多少の変更で
違和感はないし、却ってその方が分かり易い場合もある。
ボイントン一家が、遺跡発掘現場に勢ぞろい、ボイントン卿が
発掘を続けているのだが、その資金は妻のボイントン夫人から出ており、
イギリスの経済界でも有名なボイントン夫人の援助が無いと
何もできないというストーリー構成。
ボイントン卿、前妻の息子レナードはそんな父を哀れに思う反面、
義母へは反感を持っていた。
養子が3名(男1名、女2名)いて、ボイントン夫人に虐げられて育ち、
ボイントン夫人は幼い頃から彼女達を虐めては、
喜びを見出していたという異常性を強調した脚本となっている。
そんなボイントン夫人が、遺跡現場の屋上で日光浴の最中、殺害される。
ポワロを含め、多くは、「カスバ」の見学に出向いており、
犯人は誰だったのか、ポワロの“灰色の脳細胞”が働き始める。
ボイントン卿、ボイントンと前妻の息子レナード、養子のレイモンド、
キャロル、ジニー、アメリカ人のジェファーソン(実業家)、
修道女のアニエシェカ、医師のサラ、精神科医のデオドール、
旅行家のセリア、養子たちの乳母だったテイラー、
そしてカーバリ大佐が、現場にいる人たちで、ポワロはこの中に
犯人がいると、カーバリ大佐とそれぞれの目的を明かし、
犯人の特定に協力する。
カーバリ大佐は「奴隷商人」が絡む人身売買の調査に赴いており、
若い女性を狙う人間を特定するのが目的、現地警察を
呼んだカーバリ大佐に、ポワロは注射針の捜索をお願いする。
殺人事件の捜査の過程で、さまざまな事実が判明、
ボイントン家の内情が見えてくる。
発掘現場と言うクリスティお得意の遺跡現場シリーズで、
エキゾチックな景観が楽しめる作品となっており、
ポワロシリーズらしく、復讐に駆り立てる心情や薬物が
効果的に使われている。
結局は、人身売買を担っていたのは尼僧に化けていた
アニエシェカで、ジニーに近付きチャンスを狙っていたという
ストーリー、ジニーに殴打され傷付き、逃亡するもガソリンが切れ、
日差しの強い砂漠で倒れるシーンが描かれている。
テレビドラマや映画ではよく見る顔のジェラール医師役のジョン・ハナが、
ポイントとなる人物を演じ、その役柄から、犯人役だとわかって
しまうのだが、相変わらず特色ある演技を披露する。
ボイントン夫人を殺害したのは、実はジニーの母親で、
2歳の時に引き離されたセリア(エリザベス・マクガヴァン)と
ジェラール医師の犯行で、2人が共謀し、まずは首筋に薬物を打ち、
神経を麻痺させ、観光から帰ってきたセリアが、ナイフで
腹を深く刺したもので、犯行はポワロの目前で行われたことになる。
(巧妙な偽装工作も行われる)
ポワロに犯行を暴かれた2人は、薬物を自ら投与し、自殺を遂げると
いうストーリー。
ポワロは、ジニーにパンドラの箱を開けた時に放たれたのは、
“希望の光”であると伝え、ジニーに別れを告げる。
非常に面白い作品だったが、小さな子供達を虐げるというテーマが、
殺人の動機の一つになっているのだが、子供達を折檻する場面、
やはり見ていて印象が良くない。
そこを除いては文句のない作品で、ポワロシリーズらしい
異国情緒満点の景観が楽しめる。
“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆
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