☆杉の棺「Sad
Cypress」
(2003年制作、デビット・ムーア監督、脚本:デビット・ピり、
撮影:マーティン・フェラー、音楽:クリストファー・ガニング、
原作:アガサ・クリスティ
デビット・スーシェ、エリザベス・ダーモント・ウォルシュ、
ダイアン・クイック、ルパート・ペンリー・ジョーンズ、
ポール・マクガン、ジャック・ギャロウェイ、フィリス・ローガン)
アガサ・クリスティ原作のポワロシリーズでは、遺産相続をめぐる殺人事件は、
良く描かれ、毒物による殺人も良く描かれる殺害方法である。
原作者クリスティに看護師経験があり、薬物に精通していたことが
背景にあることは良く知られている。
ポワロ定番の脚本を、丁寧に演出した作品で見ごたえのある作品となっている。
ハンタベリーの村が今作の舞台、殺人が起こるウェルマン夫人の館は、
ハンタベリー・ハウスと呼ばれている。
資産家ローラ・ウェルマンの姪エリノア・カーライルとロディは婚約中、
だが、病気で療養中の叔母の看護でドイツから帰国していたメアリに
会ったロディは、心を奪われてしまう。
2人のキスシーンを目撃したエリノアは、衝撃を受けメアリに激しく嫉妬する。
ローラ宛の脅迫状、主治医のピーターの依頼で調査に訪れたポワロは、
メアリに激しく嫉妬するエリノアに遭遇し戸惑う。
ローラの病状が急変し、亡くなるが主治医ピーターは自然死だと診断、
そのまま葬られる。ローラの遺言はなく、エリノアが遺産のすべてを
相続することになるが、生前のローラの動向からメアリへ遺産の一部を
贈与するのだが、エリノアが作ったサンドイッチを食べたメアリが死亡する。
遺産相続の件、婚約者ロディとの婚約破棄を恨んだエリノアの犯行として
逮捕され、裁判で有罪となり死刑の判決が下される。
エリノアから心をメアリに写したロディは、誠実なエリノアに
人は殺せないと証言、ドクターピーターもエリノアの無実を訴えるが、
看護で来ていた看護師、ホプキンス、オブライエンはメアリに嫉妬する
エリノアの犯行と信じ、エリノアに不利な証言をする。
ポワロも有罪は疑いないとの立場だったのだが、どこか納得のいかないポワロは、
ホプキンス夫人の証言に注目、メアリの肩を持つ夫人発言の背景を調査する。
メアリは実はローラが不倫の末、産んだ子供で、ローラの妹だった
ホプキンス夫人が養母としてメアリを育てていたことを知る。
メアリは生前遺言を残しており、それは亡くなった場合の遺産は
ニュージーランドの叔母さんにすべて委ねるという遺言で、エリノア以外に
得をする人間がいたことで、ポワロはエリノアの無実を確信、
ローラの遺体の掘り起こしを地元警察のマーズデン警部に依頼、
モルヒネが死亡の原因だったことが判明する。
メアリと同じ殺害方法だったことに注目し、エリノアを犯人に仕立て、
処刑することで実子だったメアリに遺産が相続され、メアリの遺言により
ニュージーランドの叔母(=ホプキンス)が最終的に相続するという
計画だったことを見破る。
対決の時、ホプキンス夫人はお茶を入れ、ポワロと同じ紅茶を飲む、
実は毒物が入れられ、ポワロは毒物を飲んだ症状を演技、解毒剤を
注射しないと死ぬとのホプキンス夫人を尻目に、実はお茶を飲んでおらず、
ホプキンス夫人の犯行を暴き、控えていたマーズデン警部が逮捕する。
ポワロは、刑の執行直前のエリノアを救出するため刑務所へ直行し、
無罪であることを告げ、彼女を守ろうとした男性が待っていると告げ、
エリノアは医師のピーターの待つ車へと乗り込んでいく。
エリノアが無罪を主張しないのは、一度でもメアリの死を願ったことで、
罪の意識に苛まされていたためで、無罪が確定した時にポワロは、
「心で思っても罪にはならない」とエリノアに助け船を出している。
なかなか手の込んだトリックで、流石のポワロも解明に苦労するが、
関係者一人一人から状況を聞き出し、それぞれの証言の矛盾や嘘を見抜き、
事件の解決に繋げる展開は非常に面白い。ポワロの“灰色の脳細胞”の
面目躍如の作品となっている。
“ポワロは面白い”☆☆☆☆
0 件のコメント:
コメントを投稿