2020年7月25日土曜日

ポワロは面白い20/スタイルズ荘の怪事件「The Mysterious Affair at Styles」


☆スタイルズ荘の怪事件「The Mysterious Affair at Styles
(1991年制作、ロス・デベニッシュ監督、脚本:クライブ・エクストン
撮影:バーノン・レイトン、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・グラント、フィリップ・ジャクソン、
デビット・リントゥール、マイケル・クロウニン、ジリアン・バーグ、
ジョアンナ・マカラム、アンソニー・カルプ、アリ・バーンズ)

レビュー] スタイルズ荘の怪事件 / 名探偵ポワロ #20 (デビット ...  これであなたもポワロにハマる!】殺人が起こりすぎる「スタイルズ荘 ... スタイルズ荘の怪事件 [DeliciousDeath]
アガサ・クリスティーが作り上げたエルキューロ・ポワロが
活躍する探偵小説の記念すべき処女作のドラマ化である。

ドラマとしては長編第1作になっており、ヘイスティングスとの再会、
ジャップ警部との再会などが描かれ、この作品の後、両名は絆を深め、
ヘイスティングスはポワロの相棒として、ジャップ警部は捜査の協力者であり
良き理解者、そして親友となってゆくのである。

ヘイスティングスの親友ジョンが、第1次世界大戦で負傷した
ヘイスティングス中尉を訪ねるシーンからスタートする物語、
第1次世界大戦のニュース映像が流され、悲惨な戦闘の様子を映し出している。

ジョンの招きで、エセックスのジョンの実家、スタイルズ荘を訪れて
静養することになったヘイスティングスは、20歳年下の男性と結婚した
ジョンの義母エミリーが、突然発作を起こし、亡くなったことに疑問を
抱き、戦争でドイツが侵攻したことで、エセックスにベルギー人たちと
疎開していたポワロと偶然再会、事件の調査を依頼することになるのである。

スタイルズ荘には、女主人エミリー・イングルソープ、
夫のアルフレッド・イングルソープ、ヘイスティングスの友人で
エミリーの前の夫との子ジョン、その妻メアリ、ジョンの弟ローレンス、
エミリーの友人の娘シンシア、エミリーの話し相手のイビー、
メイドのドーカスが住んでいたが、遺産を巡る疑心暗鬼が渦巻いているという状況。

アガサ・クリスティーが第1次世界大戦で、薬剤師として働いていた経験を
活かして執筆された作品で、1916年に執筆し、1920年に出版されたという。
ドラマも、通常の年代(1930年代半ば)よりも20年ほど遡っており、
登場する自動車なども旧式の物で、大道具小道具も時代背景に
合わせていることがわかる。

遺産相続にまつわる事件で、実はエミリーの服用する薬に、
毒が入れられていたことによる毒殺なのだが、ジョンが犯人として捕らえられる。
ストリキニーネという毒薬が使用されるが、クリスティー原作の
ポワロやミス・マープルには良く毒薬が使われる。

村の薬屋でストリキニーネが、イングルソープによって購入されるのだが、
イングルソープは明確に否定する、また事件のあった時間のアリバイも
はっきりしているという脚本で、捜査は難航し、状況証拠からジョンが
逮捕されることになる。

村の農家の夫人に融資をしていたこと、妻のメアリがジョンと農家の婦人の浮気を
疑っており、誤解していたこと、金銭的に困窮していたこと等ジョンを
疑う状況証拠が揃ってゆくのだが、

ポワロは慌てず、
関係者を集め事件の顛末を解説、犯人はエミーの夫アルフレッド・イングルソープと
イビーが恋仲だったこと
薬局にはイングルソープに変装したイビーが訪れ、
ストリキニーネを購入していたこと等を解説する。

エミリーが遺産相続で遺書を書き換えたにもかかわらず、あることが
原因で再度書き換えたことが語られる。
そのあることとは? ポワロらしい謎解きでドラマは結末を迎えるという作品。

ヘイスティングスの回想として綴られる作品で、記念すべきポワロ、
初登場作品はとても楽しい作品となっている。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆



ポワロは面白い19/西洋の星の盗難事件「The Adventure of the Western Star」


☆西洋の星の盗難事件「The Adventure of the Western Star
(1991年制作、リチャード・スペンス監督、脚本:クライブ・エクストン
原作:アガサ・クリスティー
(デビット・スーシェ、ヒュー・グラント、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン、ロザリンド・ベネット)

追憶のポアロ『西洋の星盗難事件』~楽しませてくれるヘイスティングズ ... 名探偵ポワロ「西洋の星の盗難事件」』 1990年イギリス | じゅうのblog ... 名探偵ポワロ「西洋の星の盗難事件」』 1990年イギリス | じゅうのblog ...
   
ポワロの出身地、ベルギー出身の国際的な映画スター、マリー・マーベルが
ポワロの事務所を訪ねるということで、大ファンのポワロが,
テーブルに花を飾ったり、ケーキを用意したり右往左往する様子が
冒頭描かれる。

残念ながら、宿泊するホテルに来てくれとの連絡で、嬉々としてマーベル嬢を
訪ねるポワロ、所有するダイヤモンド西洋の星を盗むとの脅迫状が
届いていたことで、ポワロに相談する。

西洋の星には対になるダイヤモンド東洋の星があり、所持するヤードリー夫人が
ポワロの事務所を訪れる。2つの星が実は同じものだったというからくりなのだが、
それぞれ事情があり、マーベル嬢の夫ロルフが事件の背後で暗躍していたことを
ポワロが見破るという物語。

架空の中国人の存在や、マーベルの夫ロルフの暗躍、謎の宝石商の存在など
ストーリーは複雑だが、一つの宝石を巡っての脚本は良く練って有、
原作とは登場人物や背景など違っている場面はあるものの、
美人女優の為に活躍するポワロが描かれている。

ヘイスティングスは、ベルギーの女優には興味はなく、ポワロを落胆させたり、
ポワロの手作り料理をメモを取りながら食べたりと相変わらずのペースで、
いらいらするポワロが、ヘイスティングスをしかりつける場面等ユーモアも満載。

特に、理髪店でもみあげについて理髪師に講釈を述べた後、
協力して左右同じ長さにするため、協力しようと述べるあたりは、
洒落男のポワロ、面目躍如である。

“ポワロは面白い”☆☆☆

ポワロは面白い18/誘拐された総理大臣「The Kidnapped Prime Minister」ロは面白い18/


☆誘拐された総理大臣「The Kidnapped Prime Minister
(1991年制作、監督:アンドリュー・グリーブ、脚本:クライブ・エクストン、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン、リサ・ハロー)

2408】 <strong>△ アンドリュー・グリーブ 「<font color=peru>名探偵 ... 名探偵ポアロ(誘拐された総理大臣)1991 | YOSHI DESIGN 2408】 <strong>△ アンドリュー・グリーブ 「<font color=peru>名探偵 ...
   
国際連盟のドイツ再軍備に関する会議のため、フランスに渡った総理大臣が、
襲撃され、その後、誘拐されるという事件が起こる。
政府関係者が、ジャップ警部の推薦でポワロに総理大臣の捜索を依頼する。

総理大臣に同行した運転手とダニエルズ中佐に事情を聴いたポワロは、
首相が誘拐されたというフランスへは出向かず、イギリス国内でばかり捜索
するのだが、、、、。

実はケガを負った首相が、列車に乗り込み姿を見た側近たちは、
包帯を頭から顔に巻いていたため、首相かどうかは誰も確かめていなかった
という説明となっている。要は身代わりだったということで、いち早く
そのことに気付いたポワロは、イギリス国内に留まっていたという理由である。

時間のない中で、焦る政府要人たちは、ジャップ警部に皮肉を並べ、
大丈夫かと心配するのをよそ眼に、マイペースのポワロは、ダニエルズ中佐と
運転手の背後関係や出身地、家族関係を洗い出し、盟友ヘイスティングスに
ダニエルズ中佐夫人の尾行を命じ、カーチェイスの末、地域を特定し首相を
拉致している場所が導き出されるという展開。

アイルランド出身のダニエルズ中佐、夫人の復讐劇という顛末なのだが、
ダニエルズを訪ねた際、聖母マリアを飾っていたことでカトリック信者と見抜き、
カトリックの多いアイルランド出身と事件の背景を察知するあたりは
如何にもポワロらしい。
ちなみに、イギリスはプロテスタント(英国国教会)が多数派である。

車好きのヘイスティングスのカーチェイスも登場、何よりも面白いのは、
背広のサイズを図るシーンと仮縫いのシーンが、前半と後半に出てくるのだが、
サイズが合わないのは寸法が違うのだと太ったためと
認めないポワロの主張が笑える。

ちなみに、店主はサビル・ロウの仕立屋はみんな自分の教え子だと、
自信満々で、ポワロもポワロなら店主も相当な頑固者で、ほっとするシーンと
なっている。
総理大臣誘拐事件とはいっても、淡々としたタッチで、大げさな描写は全くない。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆

2020年7月22日水曜日

ポワロは面白い17/安いマンションの事件「The Adventure of the Cheap Flat」


☆安いマンションの事件The Adventure of the Cheap Flat
(1991年制作、リチャード・スペンス監督、脚本:クライブ・エクストン、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン、ジェニファー・ランドー)

名探偵ポワロ「安いマンションの事件」』 1990年イギリス | じゅうの ...  2407】 <strong>○ リチャード・スペンス 「<font color=peru>名探偵 ...  17] 安いマンションの事件 : 名探偵ポワロの全70巻リスト(TV放送日順 ... 
国際的な女スパイを暴くポワロ、銃撃戦やアメリカ製ギャング映画の
嫌いなポワロが面白い。

ドラマのオープニングで上映されている映画は、
ジェームズ・ギャグニー主演「Gメン:GMen:35」の激しい銃撃戦の
クライマックスシーンで、銃撃戦になるとポワロは目を瞑っており、
この手のサスペンス映画が苦手、というよりも灰色の脳細胞で勝負のポワロには、
短絡的な銃などは必要ないということなのだろう。

劇場のシーンには、フレッド・アステアのミュージカル映画
「トップ・ハット:Top Hat:35」のポスターも掲示されていることから、
時代背景は1935年頃と推察できる。

パーティーで一緒になった若い夫婦が、格安のマンションに入居したことに
興味を持ったポワロは早速調査を開始する。
マンションの家賃が格安な理由は何故か? そこには意外な理由があった、
と言うストーリーで、国際的なスパイを相手に、ジャップ警部とFBI
絡んできて展開するサスペンス風の作品である。

FBIバート捜査官がアメリカから乗りこんできてスコットランドヤードの
ジャップ警部が肩身の狭い思いをするという珍作でもある。
大柄なFBIバート捜査官が、ざっくばらんで無神経な典型的なアメリカ人風の
キャラクターに設定され、紳士的な英国人との違いを際立たせ対比が面白い。

アメリカ海軍の若き将校が、クラブ歌手カーラ・ロメロに誘惑され最新型潜水艦
に関わる機密文書を渡してしまい殺されてしまう。
イタリアムッソリーニ政権へ売却を目論みロンドンのクラブで
歌手エルザ・ハートと名乗り出演しているという設定。
クラブの名前はブラック・キャット。

FBIバート捜査官がアメリカにはマフィアやコーザ・ノストラ等と言う
犯罪組織はないと否定するが、機密文書を盗み取ったカーラ・ロメロこと
エルザ・ハートはアメリカのコーザ・ノストラと名乗った殺し屋に狙われる。

実は殺し屋がエルザ・ハートを狙った銃はポワロから奪い取った銃で、
弾薬が入っておらず、ポワロが銃弾を抜いていたという落ちで、
殺し屋はスパイ女性と共に捕まるというストーリー。

ポワロの秘書ミス・レモンが女性誌の記者に変装し、インタビューに
訪れるというシーンも描かれている。

“ポワロは面白い”☆☆☆


ポワロは面白い16/二重の扉「Double Sin」


☆二重の扉「Double Sin
(1990年制作、監督:リチャード・スペンス、脚本:クライブ・エストン、
原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン)

 名探偵ポワロ「二重の罪」』 1990年イギリス | じゅうのblog - teacup ... 名探偵ポワロ「二重の罪」』 1990年イギリス | じゅうのblog - teacup ... 名探偵ポワロ「二重の罪」』 1990年イギリス | じゅうのblog - teacup ...

有名な細密画の詐欺事件と遭遇するヘイスティングスとポワロ、
ジャップ警部を描いた作品。

細密画を持参し、相手に販売しようとしていたメアリと知り合いとなるが、
細密画が盗まれたとメアリがヘイスティングスに訴える、被害者のメアリと
ミス・ペンに同情し、事件を解決すると意気込むヘイスティングス、
事件の依頼が無く、探偵業をやる気のないポワロ、さてヘイスティングスは
どう解決するか?

ポワロが一歩引き、ヘイスティングスが物語を牽引して行くストーリーだが、
最後はポワロの推理で事件が解決する。
やる気のないポワロが保養地へ旅行、普段は乗らない乗り合いバスに乗車したり、
探偵業を引退しているのでヘイスティングスの捜査には協力できないと
断ったりと、ポワロらしくないエピソードを積み重ねている。

ジャップ警部が地方の婦人会の依頼で講演をすることを知ったポワロは、
講演の事は興味もないし知らないとヘイスティングスに応え、
突然イギリス北部の保養地へ行こうとヘイスティングスを誘う。
実はこの行先こそ、ジャップ警部の講演先だったということになるのだが、、、。

留守を預かる秘書のミス・レモンは、事務所の鍵を紛失、事務所へ泊まり込みで鍵を
探すというエピソードが並行して描かれている。
(ところで、秘書のミス・レモンは原作には途中から登場するのだが、
テレビドラマでは第1作から登場する。)

古物商を営む足の不自由なミス・ペンとメアリは、コレクターのウッドへ
細密画のペンダントを売る予定だったのだが、実はその細密画はメアリが
運ぶ途中に盗難に遭ったものと主張、謎の老婆がウッドへ既に7000ドルで
販売していたという構成、ヘイスティングスと警察が捜査し、
ウッドから細密画を取り上げるのだが、果たして犯人は?というストーリー。

怪しげな髭の男(実は愛し合う女性と駆け落ちの途中)を犯人と思い込む、
ヘイスティングス、ラストは、ポワロのアドバイスでメアリ、ミス・ペン、ウッドを
引き合わせることで、事件は解決する。
メアリと足が不自由ではないミス・ペンが仕組んだ盗難事件だったことが
ばれてしまうというあっけない幕切れ。

ジャップ警部は、講演の中で悪質な探偵業を非難する傍ら、名探偵ポワロの功績を
褒め、感謝の言葉を述べるのだが、そっと隠れて聞いていたポワロが
にんまりとするシーンが印象的に描かれている。

事件の解決は意外とあっさりだったが、探偵業に自信を失くしたポワロが、
ジャップ警部の賞賛の言葉に、再び探偵業への意欲を示す一遍となっている。
イギリスののどかな風景がふんだんに登場する作品でもある。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆


ポワロは面白い15/ダベンハイム失そう事件「The Disappearance of Mr,Davenheim」


☆ダベンハイム失そう事
(1991年制作、アンドリュー・グリープ監督、脚本:デビッド・レンウィック、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン、メル・マーティン)

 名探偵ポアロ(ダベンハイム失踪事件)1991 | YOSHI DESIGN 名探偵ポアロ(ダベンハイム失踪事件)1991 | YOSHI DESIGN 名探偵ポアロ(ダベンハイム失踪事件)1991 | YOSHI DESIGN

ポワロが、著名な銀行家が霧に紛れ突然消えた事件で、事件が解決できるかどうか、
ジャップ警部と5ポンドを賭けるという物語。灰色の脳細胞を駆使して、
ポワロは見事、事件の真相を突き止められるか?

仕事上の宿敵、ロウエンと自宅で待ち合わせしていたダベンハイムは、出かける用事の
ついでに、駅へ出迎えると妻に告げ外出する。
外は濃い霧で、ロウエンはダベンハイムとすれ違わなかったと自宅を訪ねてくるものの、待ちぼうけと言う仕打ちを受け、怒って帰ってしまうというのが今回の事件の発端である。

事務所兼マンションで、出かけることなく事件の解決が条件のポワロは、ヘイスティングスが調査を担当、ジャップ警部からは捜査情況の報告を受けるという条件をジャップ警部に要求。
灰色の脳細胞だけで勝負するポワロは余裕綽々で、ヘイスティングスの調査や報告から、事件の真相を導き出すという作品で、なかなか脚本が凝っている。

マジックを3人(ジャップ、ヘイスティングス)で見学しているシーンがあり、舞台上でさなぎに扮した女性が一瞬の内に消えるシーンにポワロ流の解釈を述べている場面があり、物語の失そう事件と関係づけていると思ったのだが、単なる前振りだったようだ。
事務所兼自宅のマンションにこもりっきりのポワロは、さまざまなマジックにトライ、
非凡なところを見せるのが楽しい。

調査や聞き込み担当のヘイスティングスは、関係者からの聞き取りで、塗りたてのペンキ椅子に座ったり、鳥の餌をつまんでしまったり、世界で最初に作られた自動車レース場で、レース用自動車に乗車出来るかと思ったら人違いで所有者に怒鳴られたりと散々な目に遭いそのたびに目を丸くする表情が面白い。

ダベンハイムが外出した際の服装が、水中から発見されたり、浮浪者が刑務所で捕まり
怪しげだったりと、ポワロの推理が冴えわたり、浮浪者が実はダベンハイムの変装だったこと、資金難の銀行の経営が思わしくなく、宝石を購入し資金を確保していたという事実も判明し、自宅からの宝石盗難もダベンハイムの仕業だったことがわかり、事件は解決するという作品。

テレビ画面には、思わせ振りなダベンハイム夫人のアップが多用され、事件の背後には夫人が関与しているのかと思わせ振りな演出。
ポワロに友人が預けるオウムもご愛敬である。

“ポワロは面白い”☆☆☆
   


2020年7月21日火曜日

ポワロは面白い14/コーンワルの毒殺事件「The Cornish Mystery」


☆コーンワルの毒殺事件「The Cornish Mystery
(1990年制作、エドワード・ベネット監督、脚本:クライブ・エクストン、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン、アマンダ・ウォーカー)

名探偵ポワロ「コーンワルの毒殺事件」』 1990年イギリス | じゅうの ... 2406】 <strong>○ エドワード・ベネット 「<font color=peru>名探偵 ... 名探偵ポワロ「コーンワルの毒殺事件」』 1990年イギリス | じゅうの ...

ポワロのマンションを訪ねたいのだが、入ってこないベンゲリー夫人、雨の公園で会うことにしたポワロは、夫が自分を毒殺しようとしていると伝えられる。

翌日、夫人の住むコーンワルへ出かけたポワロとヘイスティングスだったが、彼らが到着する前に、夫人はなくなっており、悔やむポワロという構成。
ジャップ警部も捜査のためコーンワル、正式にはコーンワルの村ポルガーウィズで捜査を展開する。

ベンゲリー夫人の夫が疑われる。歯科医の夫は助手と不倫の関係だとか、家政婦が夫人の食事(お粥)の時、そばに除草剤を持った夫が立っていたとの証言、毒物はヒ素系で主治医の老先生は胃炎と同じ症状のことから、毒物での症状ではないと主張する。

ポワロはベンゲリー夫人の姪、フリーダの婚約者ラドナーを妖しいと睨むのだが証拠がない。歯科医ベンゲリーの裁判は進み、数々の不利な証言が相次ぐが、ポワロは調査の結果として、ベンゲリー夫人の財産を巡るフリーダの婚約者ラドナーに確固たる証拠がないために状況証拠を並べ、24時間の猶予を与えることで供述調書にサインをさせるというストーリー。

ベンゲリー夫人を殺害、夫を犯人に仕立て、姪のフリーダと結婚すれば
自動的に2万ポンド以上の遺産が入りこむと睨んでの犯行だったのだが、、、。
ポワロは、ジャップ警部にそのことを伝えず、ヘイスティングスとタクシー代わりに馬車で村を立ち去ってゆくという作品。

冒頭、胃がおかしいというヘイスティングスに、インド料理で米を食べ過ぎるからだとベルギーでは米への関税が一番高いとウンチクを述べるポワロ。
内臓では肝臓が最も大切だと主張するが、ラストでは、ヘイスティングスの機転の利いた対応に、米を食べにインド料理店へ行くと話すのが笑える。

イギリスの田舎町を舞台に展開される物語で、のどかな作品となっている。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆


ポワロは面白い13/消えた廃坑「The Lost Mine」


☆消えた廃坑「The Lost Mine
(1990年、エドワード・ベネット監督、脚本:マイケル・ベイカー&デビッド・レンウィック、原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン、アンソニー・ベイト)

名探偵ポアロ(消えた廃坑)1990 | YOSHI DESIGN 覚え書き・ドラマ】消えた廃坑 -名探偵ポワロ | お気軽映画日記 13] 消えた廃坑 : 名探偵ポワロの全70巻リスト(TV放送日順で全話解説 ...

ポワロが深夜、突然銀行頭取の訪問を受けることから、この事件はスタートする。相談相手の中国人が行方不明のままで、探して欲しいという。

ビルマの銀鉱山の地図、そのことで商談の予定だったというのだが、果たしてウー・リンという中国人は死体となって発見される。
売春、アヘンの密輸、賭博場(闇カジノ)、アヘン窟で陶酔する西洋人、チャイナタウンに巣喰う人間模様が描き出された作品で、アガサ・クリスティーの東洋、特に中国への思い入れは相当強かったものと思われる。

背景には、アヘンに取りつかれた株式の寵児の犯行を裏付ける状況証拠、アヘンの密輸売買で財を成す悪人などが登場し、真犯人を絞りづらくしており、この辺は演出によるところだろう。
発見されたウー・リンの死体は実は真犯人の仲間だったこと、本当のウー・リンは既に殺されていたという設定。

賭け事や株への投資で大きく損失を出していた銀行の頭取が実は犯人で、廃坑の地図を入手、それを売買して損失を穴埋めしておけばよかったのだろうが、ギャンブル好きの宿命でさらに注ぎこみ、切羽詰まった挙句の犯行に及ぶというもの。

単なる書類をウー・リンのパスポートと勘違いしてしまうあたりは、真犯人しか知りえないことで、ポワロの罠にはまってしまう犯人が描かれている。

ロンドン警察庁の最新式の捜査状況を見学するシーン、ヘイスティングスと
双六の様なゲームを楽しみ、最後は勝利してヘイスティングスをからかう様子等ポワロらしい一面を見せてくれる。

最も笑えるのは、銀行の残高確認で常に同額444ポンド44ギニー44ペンスにしていたつもりが、60ポンド少なかったことで銀行員を怒るというシーン。実は小切手を入金していなかったことが判明するのだが、ポワロがいかに、自尊心の強い人物か、うかがい知れるエピソードで笑える。

“銀行は間違っていなかった”と皮肉を言うヘイスティングスの負け惜しみも笑える。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆☆


2020年7月20日月曜日

ポワロは面白い12/ベールをかけた女「The Veiled Lady」


☆ベールをかけた女「The  Veiled  Lady
(1990年、監督:エドワード・ベネット、脚本:クライブ・エクストン
原作:アガサ・クリスティー
デビット・スーシェ、ヒュー・フレイザー、フィリップ・ジャクソン、ポーリン・モラン)
 
追憶のポアロ『ヴェールをかけた女』~盗みに入り、留置場に入った ... 覚え書き・ドラマ】ベールをかけた女 -名探偵ポワロ | お気軽映画日記 12] ベールをかけた女 : 名探偵ポワロの全70巻リスト(TV放送日順で全 ...

ポワロが宝石強盗の女性に騙され、変装して盗みに入るのだが、捕まり刑務所へ入ってしまうという珍作。

事件の依頼が無く、自信家のポワロは、悪人がみなポワロを恐れてしまったのかと嘆く、そんなことはないとジャップ警部は反論するというスタートとなっているが、退屈な様子のポワロの下に、ベールをまとい伯爵令嬢になりすました泥棒ガーディが訪ねてくるのだが、事務所ではなくホテルのロビーで会うこととなる。
婚約をしたのだが、昔交際をしていた時の手紙を脅迫材料にされているので、その手紙を持ち主のラビントンから取り返して欲しいとの依頼。

ウィンブルドンのゴッドバー家に鍵職人を装い、自転車に乗り、訪ねるのだが家政婦のゴッドバーに邪魔され手紙を探すことができない、非常手段に出るポワロ、何と盗みに入ろうという計画。
自転車に乗るポワロを見られる唯一の作品だろう。
それと、家政婦との会話の中で、フレッド・ペリーが連続優勝したとの会話があることで、1934~36年ごろの時代設定とわかる。

泥棒らしく、黒装束に身を包み、帽子をかぶりすっかり泥棒になりきり、探し物の手紙を苦労の挙句見つけるのだが、物音で気が付いた家政婦が警官に連絡し見つかるシーン、体当たりで窓を破り逃げるヘイスティングス、おとなしく捕まるポワロ、その際家政婦に罵詈雑言を浴びせられ、苦い表情のポワロ、なかなか面白い。

逃げ切ったヘイスティングの連絡で、刑務所へやってきたジャップ警部に狂犬と呼ばれている極悪人だと揶揄され、ふてくされるポワロの表情など見所もたっぷり。

ポワロが家宅侵入し、宝石泥棒に騙され、手紙の入った中国製の小箱を見つけるのだが、実はそのからくり箱には、バーリントンアーケードからドラマのオープニングのエピソードで盗まれた宝石が入っており、ガーディの目的は、その宝石を盗むことだったという落ち。

ガーディにはウェザリーと言う仲間がいて、そのウェザリーはラビントンを殺害し、ラビントンに成り代わり、ポワロの前に現れ、交渉に応じないのは、
実はポワロに小箱を探させようとの魂胆だったというストーリー。

1930年代半ばを時代背景としているが、何故かポワロ作品には、中国人や中国製の小物が頻繁に出てくる。一種神秘的な響きを持っていたものか、アガサ・クリスティーが東洋的なものの代表として中国を登場させていたものと思われる。

美人に弱い、ポワロとヘイスティングスが描かれており、とても楽しい作品である。

“ポワロは面白い”☆☆☆☆